「茨城県議会会議録からの発言削除に関する声明」を発出しました
VOICE and VOTEでは、20年12月10日付で、以下の声明を発出いたしました。
茨城県議会会議録からの発言削除に関する声明
茨城県議会令和2年第2回定例会における「東海第二発電所の再稼働の賛否を問う県民投票条例案」の審議過程を検証する中で、議員の発言の一部が会議録から削除されていることが明らかとなった。
削除されているのは、6月11日の一般質問・質疑における、加藤明良議員(いばらき自民党)の発言である。加藤議員は質疑中、「パブリックコメント」に6回言及し、投票に対するパブリックコメントの優位性を説くとともに、その活用を主張した。しかし会議録からは、「ぜひとも、パブリックコメントの有効活用を提案し」との発言、および「知事の決定には、最終的に県民の多くの反対意見があったので、意見を聞いて変更したという事例」との発言が欠落している。
東京新聞の報道による議会事務局長の発言では、「事務局で作成した基準」で「重複に当たる」ため「修正」した、つまり事務局による整文処理であるとされている。しかし「重複」とは一般に、同形語、同義語、同じ助詞などの繰り返しを指す。「ぜひとも、パブリックコメントの有効活用を提案し」と、その後の「ぜひ、さらに御検討をいただきたいと思っております」は、はたして「重複」であろうか。また、「知事の決定には、最終的に県民の多くの反対意見があったので、意見を聞いて変更したという事例」と、その後の「パブリックコメントや多くの県民の意見を聞いて、知事が判断したという事例」は、はたして「重複」であろうか。
計約7時間に及ぶ県民投票条例案の審議過程につき、録画映像と会議録とをすべて照合したが、このように大きな異同があるのは、この箇所に限られる。たとえば、6月18日の連合審査会におけるある議員の発言は、会議録において「まず、最初に、知事の意見の中で、執行上の課題ということで、市町村課長から補足説明があったわけでございますけれども、(中略)県議会として、間違った条例を否決、また、可決することは難しい状況にあることをまず最初に述べさせていただきたいと思うわけであります」と記録されている。「まず」と「最初に」の重複、さらには「まず、最初に」と「まず最初に」の重複すらそのまま記録されるほど正確が期されている会議録において、問題の箇所の発言が「重複」として処理されることは考えにくい。
東京新聞の報道では、発言者である加藤議員は「私から削除を求めたことはない」としている。そうであるならば、茨城県議会会議規則第64条および第124条(議会における発言が取り消されるのは、議員本人が会期中に議会の許可を得て取り消した場合、または議長が秩序保持権に基づいて議員に取り消しを命じた場合に限られることを規定)に抵触する可能性がある。
地方自治法第115条に定める議事公開の原則は、代表制民主主義の根幹をなすものである。そして同法第123条に定める会議録の作成は、議事公開の重要な柱である。作成される会議録は、会議の状況を真正に記録したものである必要がある。正当な理由なくして、公文書である会議録から発言の一部を削除したり追加したりする権限には、議長にも存在しない。
会議録の是正を行うとともに、議会運営委員会での調査など、茨城県議会として公的な検証を行うことを強く求める。
2020年12月10日 VOICE and VOTE 代表 徳田太郎
参考:
東海第二県民投票条例案 6月11日審議の県議会議事録 自民議員発言削除の怪(東京新聞2020年12月4日)
(web版:自民議員の「パブコメ活用」発言、議事録から削除の怪 東海第二原発の県民投票条例案めぐり
https://www.tokyo-np.co.jp/article/72296)